アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170307 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170307

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 【晴】
 担任の川島先生が、産休でしばらく学校に来なくなるために、代って石黒先生が私達のクラスをみる事になった。


 石黒先生は男だったから、男子にとっては何かと心強かっただけでなく、授業の合間に話してくれる、勉強以外の話が面白くて、学校に行くのが少し楽しみだった。


 理科の授業の時だったが、先生は私達に宇宙についての様々な質問をした。


「もしもだよ、どこまでも飛んで行けるロケットがあるとして、そのロケットに乗ってね、地球を離れてどんどん行くと、いったいどうなると思う?いつかは行き止まりになって壁にぶつかってしまうんだろうか。それとも、どこまで行っても壁がなくて、宇宙は無限に広がっているんだろうか。みんな、どう思う?」と言った感じである。


 全く目新しい考えに、特に男子は目を輝かせて先生の話に耳を傾けたが、それに反して質問への答は、意外に想像力のないものが多く、先生を少し失望させたようだった。


「いいかい、もしもみんなの内の誰かが、地球を飛び立ってどこまでも進んで行くと、真っ直ぐに進んでいるのに、やがて元の場所に戻ってしまうんだそうだ。つまり誰にとっても、今自分が立っている場所が宇宙の中心になるのだというぞ。そして宇宙には壁はないけれど、まるでドッチボールの中みたいに、空間的に閉じているから、今いる所を出発してドンドン飛んで行くと、やがて元の場所に辿り着くんだな。だからみんなよく聞けよ。お前達一人一人が宇宙的に見れば、その中心に立っているという事だぞ。何と素晴らしいじゃないか。みんな全員が、宇宙の主人なんだからな。みんなは今自分がここにいる事が、ただの偶然だと思っているかもしれないが、そんな事はないぞ。100億年以上前に宇宙が生まれ、そのあと太陽系が生まれ、その惑星のひとつの地球に、物凄い幸運によってお前達一人一人が人間として日本に生まれ、今こうして、この教室にいるっていう事は、正しく奇跡なんだぞ。だからいいか、みんなお互いに物凄く貴い存在なんだから、決して傷付け合ったり、まして殺し合ったりしてはいけないんだぞ。お前達一人一人の中に神様がいるんだぞ」


 私達は何か得体の知れない光に打たれたような気持ちで、先生の話に聞き入った。http://www.atelierhakubi.com/

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