アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170305 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170305

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 【晴】
 3月の声を聞くようになると、近所から顔見知りの姿が何人か見えなくなる。


 中学を卒業すると間もなく足利を離れて、主に東京方面に就職するためだった。


 あの頃は就職とは呼ばずに、まだ奉公に出るという言い方の方が多かったようだ。


 地元にも沢山の勤め先があったから、家を出ずに社会人になる者もいたが、多くは東京を中心とした大都市に、夢をふくらませて旅立って行った。


 大企業の工場に入る者、理容店や工務店の見習いになる者、問屋のでっちになる者など、選んだ道は様々だったが、早い奴では一週間も経たない内に逃げ戻って来たり、半年後に体を壊して帰された者なども出て来て、時々道端で懐かしい顔に再会する事もあった。


 私が小学生の頃、日本はまだ敗戦の影が国全体に満ちていたが、反面、未来への夢もまた、全ての人達の中に熱く燃えていた時代でもあった。


 年上の仲間の半数以上は、社会人として巣立って行き、残りは進学して、やはり私達の目先から消えて行った。


 相手が高校生になると、もう共通の生活の場はほとんどなくなり、やがて道ですれ違っても軽く会釈する程度のふれあいとなり、その内には文字通り他人行儀になってしまう。


 その代り、町内の公式行事の時や夏休みなどには、昔と変わらない親しい関係が戻って来るのだから不思議だ。


 ついこの間まで一緒に飛び廻っていた仲間でも、社会に出ると直ぐに、髪型や服装が変わって、驚く程大人っぽくなってしまう。


 中にはたばこを吸い始める奴も出て来て、私達を驚かせた。


 今頃になると、直ぐ近くの年上の仲間が、多分父親のおさがりなのだろうが、昨日とはまるで違った服装で、旅立ちの挨拶に寄った日の事を思い出す。


 その人は今、東京で寿司店を立派に経営しており、既に三代目がカウンターに立っていると聞く。


 春は何かが新しく生まれるために、神様が作って下さったのかもしれない。http://www.atelierhakubi.com/

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