アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170306 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170306

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

 【晴】
 母屋の前の道を、いつもの納豆売りの人が、名調子の呼び声で通りかかると、お金を掴んで表に飛び出して行くのが、普段の私の仕事だったが、足をケガしてから長い間、それが出来なくなってしまった。


 納豆売りのおじさんは、こっちが呼び止めなくても家の前の道に止まって、誰かが出て来るのを待っていてくれたので、買い損ねる事はなかったし、私の足のケガを知ると、しばらくの間は玄関前まで来てくれるようになった。


 大家族の我が家では、毎朝10個は納豆を買ったから、おじさんにとっても、結構上客の方だったかもしれない。


 その頃の納豆の値段は1個10円で、粒も大きく量もかなりあった。


 みそ汁に納豆、漬物、海苔、玉子、だいたいそんなところが朝食のメニューだったが、ひとつひとつの味は、今のそれよりも相当濃厚で美味かったと思う。


 我が家のみそ汁は赤みそが中心で、ふんだんに使った煮干のダシが、具の香りと混じり合って鼻をくすぐる。


 煮炊きは当然マキを使ったへっついだったが、もうひとつ都市ガスが入っていたのが、女の人達の台所仕事には大変便利だったようだ。


 それでも庭には井戸があって、洗濯は主にそこでやっていた。


 庭は結構広かったから、かなりのスペースを畑として使っていて、ナスやきゅうり、トマト、サヤエンドウ、カボチャ、ホウレンソウ、カキ菜などが食卓に乗った。


 しかし、家庭菜園だけの収穫では、大所帯の胃袋を満たす事は出来なかったようで、引き売りや近所の店から買う方が、ずっと多かったと思う。http://www.atelierhakubi.com/

著者: 藤田 雅子
タイトル: いつものご飯に納豆さえあれば
著者: 馬場 貞児
タイトル: 自分で作って納豆食う
著者: 渡辺 純子, 須見 洋行
タイトル: 納豆力・食べるクスリ