アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170211 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170211

 【晴】《10日の続き》
 5丁目の八雲神社を出ると、通りには鎧行列を見物する人達が、両側に人垣を作っていた。

「どうする?ここで観るか?」

 ヤッさんが言うと、「イヤ、大日様に行くべえよ。行列が太鼓橋を渡るところは、まるで映画観てるみてえで面白えぜ」

 宮内がそう言ったので、私達は最初の予定通り、人垣の外側を抜けて織姫神社の前に出ると、ヘビ屋通りを大日様に向かって歩いた。

「ウウさみいな。早く行くべえよ。大日様の境内で焚火してるから早くあるるべえよ」

 田中がブルブル震えながら言うのを聞いて、みんなも急に寒さが身に染みて、「行くべ、急いで行くべ。寒くって寒くってもう死んじまいそうだ」と、半分叫ぶようにはやしたてながら、夜の道をばらばらと走って行った。

「あれっ、枡は誰が持ってるんだ?」

 私は枡を手にしていない事を思い出し、皆に尋ねると、「知んね」、「俺も知んね」と無責任な答えが返って来た。

 私はカンカンに怒って、「バカヤロ、誰でもいいから引っ返して枡取って来い。もし無くしてみろ、おめえら全部ぶちのめすぞ」と、皆を怒鳴り散らした。

 結局全員が引き返して枡を探す事になり、とぼとぼと来た道を戻り、神社の拝殿まで来ると、誰が最後だったか分からないが、我が家の枡が渡り廊下の上に乗っていた。http://www.atelierhakubi.com/



タイトル: シングルV 「渡良瀬橋」



著者: 伊沢 昭二
タイトル: 図説・戦国甲冑集―決定版



著者: 三浦 権利
タイトル: 図説 西洋甲胄武器事典