アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170207 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/170207

 【晴】
 薬好きの母のもとには、年に数回訪れる越後の毒消し売りのおばさんと、富山の薬屋さんの他に、特別な薬を持って来る人がいた。

 その人は昼間来る事はめったになく、大抵は夜の闇にまぎれるようにやって来て、言葉少なに話をすると、何かうしろめたそうに帰って行った。

 薬といっても、ほとんどは乾燥した植物の葉や根だったり、何か粉のようなものを練り固めたもの、そしてヘビやトカゲ、イモリや山椒魚、名前はよく分からない虫などを乾したもの、どう見ても石としか思えないものなど、まるで魔法使いのズダ袋をひっくり返したような物ばかりだった。

 その人が包みを開けると、他の薬とは全く違う強い臭いが、家の中に広がって行くのだが、母はなぜかこの臭いが好きなのだと言った。

 私の知る限り、母はいつもどこかが悪くて、市販の薬は無論の事、医者の薬もよく服用していた。

 それでも満足出来なかったのか、あとで聞いたら生薬とか民間薬とかいうのだそうだが、時々家に来る得体の知れない人が届ける薬も、よく飲んでいたようだった。

 困るのは、私達が病気になった時にも、母はその薬を作って無理矢理飲ませるのだ。

 大抵の薬の味は、とんでもなく苦かったり臭いが強かったりと、子供には拷問に等しいものだったが、母はいつも「良薬は口に苦し。ガマンガマン」と、まずいと言えば言うほど、その効き目が大きいと思って、多いに満足そうな顔で答えるのだった。

 飲まされる薬の中には、これなら注射される方がずっとましだと思える程、酷い味のものもあった。

 そんな時、私はいつか家出してやると、密かに決意したものだった。http://www.atelierhakubi.com/


著者: 木村 繁
タイトル: 医者からもらった薬がわかる本 (2004年版)



著者: 川端 一永, 日本アロマセラピー学会
タイトル: 医師がすすめるアロマセラピー―花粉症、ぜんそく、肥満、自律神経失調症、皮膚病、月経痛に効く



著者: 楢林 佳津美, JAA日本アロマコーディネーター協会
タイトル: こんなときどうする?アロマセラピーケアガイド―実例付き!家庭でできる症状別ケア