アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161112 | アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草

アトリエ雑記…肖像画職人の徒然草/161112

 【雨のち曇】
 祖母にギンナン採りを言い付かったので、学校の帰りに通5丁目の八雲神社まで足を伸ばしたら、銀杏の木の下は、黄金色の落葉とギンナンの実でいっぱいだった。

 熟したギンナンの実はウンコのような匂いがするし、人によっては触るとかぶれてしまうから、木の枝を折って作った箸で、用意して来た袋に詰めるだけ詰めて家に持ち帰ると、「これじゃ足りないね。もう少し採って来ておくれ」と祖母が言った。

「えーっこんなにあるのに」と私は文句たらたらだったが、祖母は「実をはがして種だけにすると、3合にもならないよ」と、素っ気無く答えた。

 私は仕方なくザルを片手に、今度はすぐ近くの八雲神社の境内に行ったが、あそこはどうも苦手な場所だった。

 普通に遊びに行くのなら何という事もないのだが、春は梅、夏はビワ、秋は柿と、目を盗んではいただいているので、もしもギンナンを採っているところを見付かると、絶対に文句を言われると思うからだ。

 私は正面の鳥居をくぐって境内には入らずに、青年団小屋の前の坂を上って神社の北裏を廻り、神楽殿裏の広場から入って直ぐの銀杏の木の下に直接出た。

 あたり一面銀杏の実だらけで、ウンコの匂いが漂っていた。

 私は本殿の方に注意しながら急いで実を拾い集め、もう箸で挟んでいられないので、ぐちゃっとする実を手で直に掴んではカゴの中に投げ入れていった。

 両手でやっと持てる位集めると、私は来た道を引き返して家に戻ると、「お祖母ちゃん採って来たよ」とカゴを見せた。

「オヤッ、ずいぶん採れたね。これなら一升はあるよ」と、祖母は嬉しそうに言った。

 その夜に、私の顔と両腕は、見事にふくれあがって、翌日は学校を休む事になった。http://www.atelierhakubi.com/